野生動物の世界には弱肉強食の法則がある。これは何も野生動物の世界だけの話ではなく、人間の世界でも当てはまる。人間には自己意識、つまり自分の利益だけを求める意識が元来備わっている。そのため、他者を押しのけても、自分の利益を追求してしまうからだ。
「私はそんなに自己中心的ではない」と言われる方にも、この自己意識は必ず備わっている。具体例を挙げる。ほとんどの人は、知らない人が亡くなるよりも、自分の家の犬が死んだ方がよほど悲しいだろう。いかに亡くなった人がわが国に有益な人物であっても、いかに死んだ犬がろくに躾もできていないダメな犬であってもだ。上司に酷く怒られたのが、自分であれば寝れないが、仲のいい同僚であれば寝れるはずだ。
このように、人間には原則として、利己的な自己意識が備わっている。それ自体は仕方のないことである。むしろ、そのような意識があるからみな努力し、世の中は成り立っているとも言える。もちろん私も、自己意識の存在自体否定するつもりはない。
問題は程度である。自己意識が強すぎると不幸になる。これは、私が普段から徳を積めとか施しをせよなどと言っていることから説明するまでもないだろう。エゴの塊のような人間は幸福になれないのだ。
では、自己意識が比較的強いと感じられる方は、どうすればよいのか。そういう方は、普段から代理想像を心がければよい。
代理想像とは、簡単に言えば相手の立場に立って考えることである。自己意識に対し、他者意識とも説明される。
相手は何を考えているのか。相手はどんな気持ちなのか。相手は何を悩んでいるのか。相手は何をして欲しいのか。そのようなことを相手の立場に立って考えるのである。相手のことを思いやる気持ちをもつのである。代理想像が身につけば、当然相手とのコミュニケーションが円滑になる。
代理想像=他者意識は自己意識と相対する概念であるから、代理想像ができるようになると、必然的に自己意識は抑えられることとなる。
この代理想像は成功理論の観点からも有効な手法である。すなわち、相手を思いやれる人のもとには自然と人が集まり、人脈が形成される。また、人間関係がスムーズになれば、他人の助力や助言を得やすい。このように、代理想像できる人間は成功するための不可欠の条件である他人の協力を容易に得られるため、成功に近づくという訳である。
自分の自己意識が強いと感じている方に言う。相手の立場に立って物事を考え、相手を思いやれ。
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