日本語は表意文字であり、英語は表音文字である。例えば「愛」という字は(あい)という音と共に、愛に関する様々な意味を持っている。人によって色々に想像が膨らむ。たった一文字でだ。たった一文字を言葉にするだけで、相手を至福に誘ったり、奈落へ堕としたり出来るのだ。対して「A」は(エー)という音を持っているが、意味はない。ゆえに日本人は古来より言葉を何より大切に扱ってきた。そこから、言葉には霊魂が宿っているとの「言霊」の概念が生まれた(無論ルーツは梵字あたりだろう)。厳かにして恐ろしい。
例えば、会社で本人は至って普通の健康状態なのに、会う社員会う社員に「どうしたの顔色悪いよ」「風邪でも引いた?」「昨日遅かったの?」「何か心配ごとかい」「元気ないねえ。どっか悪いの」と言われ続ければ、「俺ってそうなのかなあ」と悩んでしまったり、早退したりすることになる。これは「言霊」による「他者暗示」の例だ。
また、「最近景気はどうですか?」「いやあ、良くないですよ」とか「ジドジドとよく降りますね」「本当に鬱陶しい、嫌になりますな」といった社交辞令的なものから、「どうも身体の調子が悪くて」「給料なんて下がることはあっても上がることはない」など、愚痴めいた言葉を何気なく聞かされることも多いだろう。
成功を志すあなたにとって、こんな「他者暗示」に囚われないためには、聞き流すことが手っ取り早い対処法であるが、問題はあなた自身が、つい口癖のように漏らしてしまう言葉に、マイナスの言葉がないかどうかである。胸に手を当てて、よく思い返してみるといい。「つまんねえなあ」「マジムカつく」「こんなのやってられるか」などと、口に出してはいないか。心の中で思っているだけならまだよい。口に出した瞬間、その言葉は第三者の耳に届くことになる。それを聞いた第三者は、あなたに対して何らかの反応を心に抱き、それが想念となって、あなたに返ってくるのだ。
これが、あなたにマイナスの確信を植え付けてしまう「言霊」の恐怖である。
あなたがそれほど思っていなくても、口に出して言ってしまったばかりに、人の耳から耳へ伝わり、周囲の人はあなたに対し、あなたの言葉を裏付けるような言動をしたり、同意するような態度を採るようになる。それを見てあなたは「ああ、やっぱり自分はそうなんだ…」とマイナスの確信を深めていくことになるのだ。
その悪い”確信”は、確実に言葉の意味を実現させ、あなたに悪い”自信”を与えてしまう。そしてその悪い”自信”がやがて悪い”信念”となり、マイナスの行動を採らせる源となり、悪循環の輪廻に陥ってしまうのだ。
もはやこれは”信念”ではなく、”執念””怨念”のたぐいである。
こうなっては成功どころの話ではない。
普段の口癖に注意せよ。そして「言霊」の恐ろしさを知れ。
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