知り合いの社長に、とにかく決断の遅い人がいる。そんなことでは会社が危ないですよと、会うたびにご忠告申し上げている。彼は経営者であっても、成功者とは言えない。
とかく自分に自信のない人は、他人の知識や意見を受け入れすぎる。そして、それによって物事を決定しようとする。友人や知人、家族や会社の同僚に意見を求めるが、それらの人々は自分の立場から意見を述べるから、その結果本人は余計頭の中が混乱してしまう。
例えば、2人の女性から同時に結婚を申し込まれた、世にもラッキーな男性がいたとしよう。1人は女医。もう1人は音楽家だったが、どう考えてもどちらの女性と結婚すればいいのか分からないというのだ。友人や会社の同僚は「女医さんと結婚できるなんて幸せだね」と彼を羨ましがった。「やっぱりそうだよな」と彼。音楽家の彼女と会ったことのある知人は「彼女は君と感性がとても合いそうだよ」と言った。「僕もそう思う」と彼。もちろん親にも相談し「あなたが幸せになれると思う人を連れて来なさい」と言われた。
それから彼は、それぞれのプロポーズに何らかの理由をつけ、返事を先に先に延ばしていた。そんな彼のいつまで経ってもハッキリさせない態度が、徐々に周りの友人や2人の女性を苛つかせた。「どっちがいいと思って毎日聞くけど、女医さんの方にしとけって言ってるじゃないか!」遂には「つまり君はどっちも好きじゃないってことさ!」と愛想をつかされてしまい、結局2人の女性は彼の前から姿を消した。彼は2つの恋と、人生最大のチャンスを逃した。
優柔不断が判断を鈍らせ、行動を阻んでいくのはなぜか?
自信の問題にも繋がっていくのだが、大抵の場合自分が傷つきたくないからである。どちらか一方の選択を迫られた時、選択しなかったもう一方に苦しい思いをさせてしまう。そのような思いにさせてしまった自分を、相手から悪く思われたくないのだ。つまり、自分が一番かわいいのである。
しかし、うぬぼれるな!
相手はリスクを冒して、あなたに告白しているのである。しかも相手は女性だ。大変な勇気と決意をもって告白しているのだ。高みの見物よろしく彼女らを傍観しているあなたは何だ。即刻結論を下し、明確な意思を表示しなければならないのだ。
話は結婚問題ばかりではない。ビジネスでもそうだ。相手から仕事のオファーがあった時に躊躇し、結論を先延ばしにしていれば、その商談は当然壊れるだろう。
肝心なことは、あなたが何らかの好意を持たれた時、立場的に優位に立ち、選択権がある時、自分の方が優れている、私は偉いなどと内心思い、その気持ちの良さに浸っていたいという慢心から、判断や決断を先延ばしにすることが、結局はあなたを成功から遠ざけてしまうことになるのである。
誰だって自分が一番かわいい。だが時には、心を鬼にして選択しなければならない場合がある。それが出来て初めて、成功という選択肢もやって来るのだ。
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